山﨑達枝 災害看護と私 Disaster Nursing

第15回絆塾・平成30年7月豪雨災害視察

はじめに

2019年2月18日(月)、絆塾では「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」の被災地の一つである愛媛県へ視察に行ってきました。

参加者の声

参加された方からの感想文やレポートをご紹介します。

山崎絆塾 2018 年西日本豪雨被災地ヒアリング・視察レポート

PDFファイルでまとめていただきました。

見出し抜粋
1.今回のヒアリング・視察の概要
 (1)ヒアリング・視察実施日
 (2)ヒアリング・視察実施場所
 (3)視察メンバー
 (4)ヒアリング、視察の趣旨・目的
2.平成 30 年 7 月豪雨概要
3.ヒアリング結果
 (1)大洲記念病院
 (2)西予市役所
3.被災地・被災物視察
 (1)西予市明間地区
 (2)西予市野村地区
 (3)肱川流域(西予市~大洲市)
4.結びに代えて

NEC 堀格

第15回 山崎絆塾 平成30年7月豪雨災害視察 愛媛県大洲市、西予市

昨年の西日本豪雨災害にて松山での被害や被災が伝わってきませんでした。今回現地に行き状況を直接聞き・見ることができましたので報告いたします。

水害が多い地形にある大洲記念病院では、毎年台風に対して降水量・貯水量・水位を常に早い段階で情報を取り災害に備えていました。

昨年も上層部では早急に防災対策本部を立ち上げ、防水シートや防水パネルなどを設置し荷物を2階へ移動も行っていました。外来患者・付添家族へ対応、病院や職員の車を駐車場から高台にある公園へ移動も行っていました。

7月7日1階の浸水後も患者・付添・職員へは売店・コンビニの食糧・マジックライスなど備蓄品を提供。トイレも断水のためビニールで簡易トイレとして使用していたそうです。

7月10日には診療が開始され、「復旧の早い病院=地域を助ける病院である」との言葉をお聞きしました。

そのためには職員を守る体制を持ち「職員1人1人の生活がかかっている、困っていれば寄り添う」という経営者の考え「自宅を守らせてから仕事に」と特別休暇や被害に応じての見舞金を出したそうです。職員も病院から守られている。皆で助け合い、人と人とのつながりを持っている。もともとの素地でもある関係性が、素晴らしいと感じました。離職率もほぼないと伺い驚きました。

看護部長さんは災害時、福井から支援に来ていた災害支援ナースへ感謝を述べていましたが、しかし「災害支援ナースに対して、何かを準備をしなくては申し訳ない」などの言葉があり反対に驚きました。自己完結で支援に行くことを教え込まれている支援ナースに対し、支援を受ける側が、寝る場所や食事など考えてしまう事、これは災害支援ナースの認知度が全国的に低いのではないかと推測されました。また人を大事に思う事なのでしょう。

愛媛県西予市市役所で被災状況と復興に向けた取り組みについてお話を伺い、お忙しい中、被害の大きかった野村町を案内して頂き復興最中の状況を見学してきました。

市役所では現在復興に向けてのまちづくりについて、保健師さんからの災害支援ナースについての話を聞き情報の収集・共有・発信が大切である事。混乱の中、情報の申し送り・受け・指示の仕方が工夫され用紙の変更をし、毎日変わる支援ナースとの情報のやり取りを行うことができた事。そして避難所の閉鎖に伴い、災害支援ナースの要請を中止した事を聞きました。

野村町は、山に囲まれた、静かで自然豊かな、田園風景が広がる場所であり、人の温かみのある街でした。水害で命を落とす惨事となったとは、思えない場所でした。

川沿いの家々や保育園、給食センター、相撲で有名な乙亥会館など水没・浸水と甚大なる被害を受けておりました。

小学校の校庭には、仮設住宅が建ち避難生活を送っている方が、居る現状もあり、あの時に避難していればと目頭を押さえ友人の死を話して下さいました。

また「車に母親を乗せ、濁流迫る川を渡り避難した」と言葉にならないほどの川のの恐怖も語っていました。ダムの放水状況や川の水位に対して確認・避難をする事は行っていたがやはり水の勢いは壮絶であり自然の脅威を感じられずにはいられませんでした。

現地で生の声を聞き、災害時の準備の必要性、対策を講じることの重要性、人とのつながりを作る大切さを感じることができました。

多くの事を目で見て、耳で聞き、手で触れ、心で感じることができました。少しでも自己で感じたこと、学んだことを共有し、災害支援の一助となればと考えました。

また1日も早い復興を心から祈りたいと思います。

横浜新緑総合病院 長島良江

山﨑絆塾 愛媛視察に参加して

大洲記念病院では被災状況と対応を災害対策本部の立ち上げからライフライン、診療の復旧まで時系列に示していただいた。食事の提供、携帯トイレの使用など

備えがなければできないこと、エレベーター停止中のベルト使用での担架搬送も訓練でしか見たことがなく、実践に活かされている事が学びでした。

「マニュアルはない、毎年火災、防水訓練を実施し、防水シート・パネルの設置をチームで行っている。職員の防災意識と実践力が高かった。」ということが印象的でした。

「復旧の早い病院、地域を助ける」職員のチーム力、職員も被災者であり、特別休暇やお見舞い金など職員によりそう理事長のマネジメントに感銘を受けました。

施設、地域ともに災害支援ナースの受け入れに関しては活動の範囲や時間帯など決めていないという声が聞かれ、双方の理解が深まる必要性を感じました。

西予市役所から被災地野村町視察で被害の大きさを実感しました。

自分たちの地域で災害が発生したら施設で、地域で自分は何ができるか、自問自答しています。

ご協力頂いた方々に深謝いたします。

藤川夕子

愛媛訪問

平成30年度は、様々な災害が続いた一年でした。災害の被害にあわれました皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。

平成30年7月豪雨災害は、長く続いた大雨の被害で、西日本を中心に各地で被害を引き起こしました。あの大雨が降り始めたころ私は、7月5日から出張で高知県から愛媛県に移動しておりました。降水量をチェックしながら、7日のお昼頃に愛媛県庁へ立ち寄り、被害が出ていないことを確認した上で、広島県へスーパージェットで渡り、広島県庁の支援に入りました。その後、愛媛県でも大きな被害があったことを知り、大変気になっておりました。そのような中で、愛媛県を訪れる機会を与えていただきましたことに深く感謝をいたしております。

被災地のその後は、そこで生活されていた方々の生き様や今後にむかっていく強い意志を感じることができました。その中で印象に残った事柄を2つ紹介させていただきたいと思います。

大洲記念病院への訪問

大洲記念病院では、「大洲には水害の意識がある」ことから水害に強い病院作りの取り組みを知りました。災害前から患者と病院のスタッフ、そして地域の安全を守るという視点での日頃からの防災訓練の中に、特に防水訓練が行われていることを知りました。災害後も、職員一人一人の生活は仕事をすることで成り立っており、職員の生活を守るために考えられたお話が印象深くこころに残りました。災害において職員に寄り添うために、実務的に現実的に困っていることに目を向け、出来ることを実践され、復興に向けて金銭面での苦労の軽減や休暇が取れるように工夫されており、管理職や経営者のアイディアであったことを知りました。その後の退職者や離職者がなかったこととみんなが助け合って職員一人一人がとても大切にされていること、マニュアルだけではなく災害への対応が体感で取り組まれていることを知りました。今後に向けての対策へとつながっていることはまさに事業継続計画;BCPを超えた業継続マネジメント;BCMを実践していると思いました。

被害の大きかった西予市の野村地区への訪問で

西予市役所で被害の概要の説明を聞いたのち、野村地区の住民でもある課長の案内のもと野村地区へ訪れました。大雨により、肱川で野村ダムと鹿野川ダムが満水になり、異常洪水時防災操作を余儀なくされ、下流域では急激に増水となってしまった。避難を呼びかける周知方法は大雨の中では十分に機能していなかったのかもしれないとお話の中でありました。普段は水量も少なく、穏やかな川の流れに見えた川の氾濫や土砂災害のあと、いまだ復旧作業に取り掛かれずにそのまま残された街並みは、被害の大きさを物語っておりました。乙亥会館の中には災害の写真が展示されており、言葉にならない複雑な思いがこみ上げてきました。一人でも多くの方に現地に訪れて、実感してほしいと思いました。

復旧・復興には、そしてより災害に強い新しい街つくりには、これからも長い道のりがかかるかもしれません。現地の訪問で体感した感覚を今後の災害支援へと生かしていきたいと思います。

訪問にあたりまして受け入れを許可していただきました現地スタッフの皆さま、様々な準備を進めてくださいました山﨑絆塾のスタッフの皆さま、本当にありがとうございました。

最後に現地コーディネーターを務めてくださいました趙さん、災害発生直後からの関りがあってこそ、今回の訪問が実現したと思います。本当にありがとうございました。

岸野真由美

写真報告

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宇和島バス会社様のおせわになりました
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大洲記念病院 1階浸水
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山崎絆塾から西予市に義捐金贈呈
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被害の大きさを物語る西予市野村地区、肱川流域
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被害の大きさを物語る西予市野村地区、肱川流域
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被害の大きさを物語る西予市野村地区、肱川流域
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水没・浸水と甚大なる被害となった相撲で有名な乙亥会館
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