2015年9月19日、海上自衛隊横須賀基地にて護衛艦「いずも」の見学研修を実施し、75名の方が参加してくださいました。

一昨年の護衛艦「ひゅうが」見学と同じく、山﨑絆塾に御支援を頂いております小林雅貴さんの御尽力により貴重な学びの機会をいただきました。

研修内容は「海上自衛隊における災害医療について」「山﨑絆塾 宮城県石巻市視察報告・福島県双葉郡浪江町視察報告」でした。

参加費について

当日参加された皆さまから頂戴した「参加費」は、南三陸町南三陸病院の移転支援費用に使わせていただきます。

南三陸町公立志津川病院は、東日本大震災の大津波によりその全ての機能を失いました。皆さんの望みでもあった新病院が、2015年12月14日に南三陸病院として高台に移転します。

その移転のお手伝いに駆けつけようとボランティアを募集しましたところ、22名の方が手を挙げて下さいました。その活動資金に使わせていただきます。

今後も山﨑絆塾は、皆様からのお力添えを頂きながら続けて行きたいと願っております。今後とも皆様どうぞ御支援を宜しくお願いいたします。

参加者の声

参加されました全員の方との集合写真と、お二人に感想を執筆いただけましたので御紹介いたします。

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護衛艦いずも艦内研修に参加して ~知ることからの学び~

初めて山崎絆塾に参加させていただき、災害医療・看護の活動について沢山の学びと感動を得ることができました。

今回、護衛艦いずもの艦内を隅々まで見学説明を受ける機会をいただき、まるで映画の撮影現場に同座しているような感覚になりました。

いずもは、出雲大社の由来から名づけられたとのことで、その艦内はとても広く医療設備や救命医療、更に感染症対策などが地上と同様の設備が搭載されていました。ヘリコプターも5台飛ばすことができ、陸・空で困難な部分を海から護衛できる連携体制など、海上自衛隊の活動と役割を学ぶことができました。

艦内での被災地視察報告では、3.11東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の参事に引き戻され非常に心が痛みました。平常な暮らしが可能な地域とまだまだ手つかずの地域が残っている福島県の現状です。未だ避難生活を強いられている被災者の方々の健康被害への懸念は否めません。

津波で甚大な被害を受けた南三陸と、原発事故で立ち入り困難な福島県相双地区での問題は大きく違いますが、被災者はそれぞれの心の傷を背負いながら生活をしています。

私たち医療従事者にとって一次救命は勿論ですが、避難生活を余儀なくされた方々の生活の営みを重視し、その方々に寄り添った形で心身の健康を取り戻す支援を継続的に行うことが最も重要であることを再認識しました。

黒川先生のカンボジアでの活動報告からは、言葉の壁と文化の違いにより日本での常識が通らないことや、感染症の種類などは国内の知識だけでは対処できないことに納得し、もし日本に災害が起こり何もなくなってしまったら、常識の基準さえも変わってしまうことを確信しました。現に、東日本大震災時、福島県福島市で傷病者の受け入れを行った際、文明の利器が麻痺し何もないところで、プロとして何が提供できるか戸惑いながら夢中で動いた記憶が蘇りました。

だからこそ、災害マニュアルだけには頼れない想定外の事態に遭遇したとき、技術はもとより知識を知恵に変える力を持ち備え、敏腕な対応と旬座の判断の応用ができなければなりません。そのためにシミュレーション教育と災害時を想定したあらゆる職種での訓練が不可欠であることを痛感しました。

最近、地球上で頻発している地震・噴火・水害・暴風など起きてはいけない、しかし起きない保障はどこにもない状況下で、山崎絆塾の取り組みは素晴らしいことであり、その熱意と行動力に心を打たれました。地域住民が安心して暮らせるために、人として専門職として微力ながらお手伝いをさせていただければ幸甚です。

主催者の方々のご尽力に感謝いたします。ありがとうございました。

福島県福島市 看護師 沼崎美津子

護衛艦いずも見学の1日

災害看護の講師として大変お世話になり、心から尊敬している山崎達枝先生から「護衛艦いずもの見学を兼ねた活動報告会に興味ありませんか?」とご連絡をいただいたのが8月の末。申込みのご連絡をしてから災害看護や自衛隊の活動に関して敏感になっていたおよそ2週間の間にも、久しぶりに都内で3.11の記憶を思い出させる大きな地震があったり、北関東では大雨による大洪水という非常事態が起きたり、日本はあらゆる災害が起こり得る災害多発国だということを深く感じさせられていた。

いよいよ当日。それまで続いていた悪天候が嘘のように晴れ渡った青い空の下、横須賀駅から小学生の社会見学のような気分で歩き、想像を遥かに超える大きな護衛艦いずもに乗り込む。制服を着たりりしい自衛官の方々の見守る中、我々が立っている倉庫のような一画がディズニーリゾートのアトラクションのような大きなエレベーターとなって昇り、広い甲板に出て、緊張感溢れるシチュエーションでありながらも、わくわくしながら艦内に入っていく。映画の中でしか見たことがないような配管が入り組んだ艦内の急なはしご階段や狭いドアを進み、研修のための部屋へ。

まずは看護職でもある海上自衛隊の小林専任伍長より、護衛艦いずもやその役割についてとても詳しくお話を伺う。護衛艦とは何か。いずもはどのような役割を持った船であるか。非常時に病院船として機能を持つ可能性もあり得るか。ユーモアを交えた中にも、使命感と誇りをもっておられるのがうかがわれる興味深いお話であった。

海上自衛隊における災害医療への取り組みとして、いずもでの内閣主催と東京都主催の災害訓練の模様を伺った後に、山﨑絆塾のみなさまの被災地視察報告が行われた。

東日本大震災で大きな被害にあった福島県双葉郡浪江町、宮城県石巻市の「今」の姿が、災害看護に従事される視点でのレポートとして発表される。帰宅困難地域となり時間が止まったままの町。自分の家にいつ戻れるかわからない中、仮設住宅で不自由な生活を続ける被災者の方との会話。語り部として大震災の被災を風化させないために人に伝えている方。現地の消防士さんや診療所の看護師さんなどの専門職…そういった方達とのやりとりを聞いていく中、実際に現地を訪れた発表者のみなさまの中で、「非日常の日常」とでもいった体験がいかに大きかったかが伝わってくる。そしてこれは視察に行った方だけの感想ではなく、ここにいる全ての各々の中で問題意識として存在する、共有のテーマなのだと実感する。

発表後の艦内見学時でもそれは顕著であった。司令室や船室など滅多に見ることのできない様々な機能の説明を受けながら艦内を回る中、一番参加者の興味を惹きつけ、時間を要したのは、簡素でありながらも非常時には十分な治療が可能な、入院病床やICU、手術室の設備などの医療機能としてのエリアであった。

社会見学の気分で参加したはずなのに、献身的に自分の使命として災害看護に携わるみなさまの姿を目の前にして、あらためて自分ができることは何であるか、立ち止まって振り返ってみる機会となった。 貴重な1日をありがとうございました。

一般社団法人S-QUE研究会企画室 星早苗

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