わが国では、阪神・淡路大震災以後病院施設での災害医療・看護の研修会が徐々に開催され様々な側面から準備されるようになってきています。しかし、減災に向け、災害対策準備・訓練を行っている施設が未だ少ないのも現状です。また、自然災害・大規模災害等の災害の種類・災害サイクルを認識し、被災者および被災地域のニーズに対応できる災害医療・看護教育はまだまだ発展途上にあると言えます。

普段から防災訓練や災害発生時に必要な看護・介護、被災者および救援者への心理的援助、また病院施設での医療提供のみならず、避難所や救護所、仮設住宅での看護活動など、被災者のニーズに応じられる教育・研修を行い実践につなげていくことが重要です。

災害看護教育・研修のねらい

災害は進化すると言われています。都市化と人口密度の過密化・大量高速輸送・工場と住宅の混在化など複雑化した生活環境問題やテロ問題など、いつどこで自然・人的災害や事件が発生するかわかりません。平常時に危機管理意識を強く持ち、災害発生後の被害が軽減されるように訓練・研修による実践的な災害医療の専門的な知識と技術を習得することが必要です。

我が国は災害多発国といえども、阪神淡路大震災程度の地震を数回経験することはありえないと思います。つまり私達は災害医療において絶対的な経験不足と言えます。この経験不足を補うには真摯的な訓練が不可欠だと思います。

過去の災害・大事故・大事件の様々な事例を生かし、あらゆる状況の災害を想定し対応できる訓練を重ねていくべきです。

災害訓練・研修方法

災害の教育訓練は継続的で断続的である事が大切です。

多くの人は「災害には会わない、発生しない」と思っています、また災害を体験している人は少ないです。しかし、災害とは対岸の火事ではありません。知識や情報を頭で理解するだけでなく、より具現化してさらに模擬体験する事によって人は災害時に効果的に行動する事が出来ます。一定の間隔で教育訓練を繰り返し実践し、意識化していくことが大切なのです。

日本の国土状況ではM6強の地震がいつどこで発生してもおかしくないと言われています。今回の中越地震から、ストレス・ショックなど被災者への支援のあり方についてたくさんの課題が出されました。多様化する災害発生に備え、一人一人が危機管理意識を持ち、冷静に、また適切に機敏に行動できるためには、定期的な研修と危機管理意識の向上は不可欠です。災害時の適切な行動を体で覚え、確認し加えて防災マニュアルの実効性を検証できる訓練が、減災に対する自覚を促し連帯を育むことに繋がっていきます。非常事態下でも、適切な判断に基づいて、被災者・被災地域住民が不安を抱くことなく、安心して生活できるように救急災害医療の知識と技術を高め、その期待に応えていくべきです。

私は実際に日本看護協会や各都道府県看護協会・病院施設・看護教育機関等、多くの施設で教育・研修を行っています。研修を行いながら、他施設の災害看護教育・訓練モデルを提供できるよう、私が行っている災害看護研修が少しでも継続教育研修に役立ち・参考になれば幸いです。

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