あなたは防災対策していますか?
政府の発表によれば、むこう30年以内に東京にマグニチュード7クラスの直下型の地震が発生する確率は70%であるとされています。
また、中央防災会議は首都直下でマグニチュード6.9の地震が発生すれば火災・建物倒壊などにより、最悪で死者は1万2000人以上に達するという被害想定をまとめました(図参照)。
あなたは今ここで阪神大震災や中越地震のような地震、または火災が起きることを想像できますか?
地震の被災者の方々の話では、崩れていく家や割れたガラス、瓦礫の中を、着の身着のままで必死に逃げたといいます。そのときに必要なものを選んでいる余裕などもちろんありません。その後も、避難所や車の中で、物資の不十分な厳しい生活を強いられるかもしれません。災害が起きたときに持ち出すもの、避難生活で必要なものを事前に用意しておくことが何より大切です。前述の政府発表からも明らかなように、可能性の問題でいえば交通事故や火災に遭う確率よりも地震が起きる確率のほうが、はるかに高いと言えます。しかし、自動車や家に保険はかけても、災害準備をきちんとしていない人は多いと思います。命を守るために重要なことは、救出・救助活動よりも、一人ひとりが次に発生するであろう災害に備えておくことなのです。
災害が起きたときの優先順位
次に災害が起きたときの優先順位について考えましょう。
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まず自分自身の身を守る
災害が起きたときにはなによりもまず、自分自身の身を守ることが何より重要です。自分が負傷してしまっては、家族や周りの人々を助けることはできません。災害後、特に多い負傷は、割れたガラスなどを踏んだことなどによる怪我です。わが身を守るために非常用持ち出し袋とともに、履いてすぐに逃げることのできる安全靴や懐中電灯を必ず用意しましょう。
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次に家族を守る
自分の身の安全を確保できたら、玄関のドアを開けたり、ブレーカーを落とす、ガスを止めるなどの被害を最小限にくいとめるようにしましょう。また、家族が外出中に災害に遭うことも想定して、集合場所や連絡方法を日頃から決めておきましょう。
災害はいつ起こるかわかりません。そのとき、あなたがどこにいるかも、家族やあなたの守るべき人がどこにいるのかも分かりません。ですから、普段から防災に向けて計画・訓練・検証・備蓄しておくことが大切です。特に非常用持ち出し袋を用意しておくと、災害発生時、発生後に有用なだけでなく、安心感から落ち着いて行動することができますので必ず準備してください。
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地域を守る
防災は地域のチームプレー、ネットワークが不可欠です。阪神大震災の被災者のうち、自力で脱出した人が34,9%、家族に助けられた人31,9%、友人・隣人に救助してもらった人28,1%、救助隊に助けられた人1,7%となっており、公助は2%弱でしかありません。個人が準備しておくことに続き、集合住宅であっても両隣3件の連絡網をつくるなど地域社会で日頃から情報交換やコミュニケーションをしてネットワークをつくることが大切です。
また、健常者は災害発生時に知る・消す・逃げる等の対応が一人でできます。しかし、介助や補助がなければそれらの行動が困難な人々もいます。身体障害者・高齢者・病気療養者・乳幼児等行動面で支援が必要な人、聴覚・視覚障害者・日本語のわからない外国人等情報交換に支障がある人、知的障害者・乳幼児等理解や判断がスムーズにできない人があげられます。これらの人の安全を確保するためには本人自身が防災能力を高めるのはもちろん、地域の情報交換体制が重要になります。震災で救出された要介護者の多くの方は、身体的状況を知っていた隣近所の方が通報、救助してくれたことにより助け出されています。地域が日頃から情報交換対策を考え、防災教育プログラムを開発するなど、実際の災害に備えて訓練をしていく必要があります。
災害から自分自身、家族、生活する地域社会の暮らしや文化を守るためには、以上のような個人の準備、地域の綿密なネットワークが不可欠であり、そのためにもまず一人ひとりが平常時から防災対策を講じ、減災に努めることが何よりも大切なのです。
非常用持ち出し袋の中身
懐中電灯、軍手、安全な水(500mlペットボトル3本くらい)、ビニール袋(大・中・小)、携帯ラジオ、タオル、小銭、非常用食料、保険証コピー、医薬品、簡易トイレ、下着、弾性靴下(エコノミー症候群予防のため)、紙おむつ・粉ミルク(必要であれば)等々。