地震

全世界の地震発生の10%強は日本で発生し、体感地震は1,000回近いと言われています。日本は世界でも有数の地震多発国であり、2004年の中越地震でも甚大な被害が発生しました。

災害の特徴

急性型であり、発生までの時間が短い。

自然災害の中でも死者・負傷者数は他の自然災害の火山噴火や風・水害等より多くなります。地震と火事、地震と津波は付物と言われるように二次災害の発生が高く、また山崩れや土石流を伴うとその被災者数は更に広がっていきます。

地震による人的被害・傷病の特徴

わが国では地震の震度別表示は震度7まで分けられています。震度5弱の地震から食器や本が落下することで人的被害が発生すると言われています。

傷病の主な原因は建物の倒壊および落下物によるもので、負傷者の約80%は手・足等の四肢外傷、そのうちの半数以上はガラス片、落下物、転倒によるものです。居住屋内での負傷は約73%にのぼり、男性よりも女性の負傷者が多くなります。

また、火災や病院・工場・研究室等からの有毒ガスの発生、津波や山崩れによる負傷者も発生します。

2035±10年には南海・東海地震が発生するともいわれています。その結果、震度6弱、3mの大津波が来ると想定される場所は、推進地域に指定21都府県、652市町村におよびます。また、3つの地震が同時にあるいは短期間に相次いで発生する可能性や富士山が噴火することも危惧されています。

突然、なんの前触れもなく発生する地震。現代の科学技術を駆使しても、予知する事は困難です。

地震によって引き起こされる被害は様々ですが、我が身を守り地域社会を守るためにも、過去の教訓を生かして日々防災に努め、減災を心がけることが何よりも重要となります。

事故

社会・経済の発展に伴って増加するのが事故です。特に高速・大量輸送の現代においては、ひとたび事故が起きると大災害につながる恐れがあります。事故はほかの災害に比べ日常化しており、私たちの生活のすぐそばにあるものです。小さな事故であれば、それは災害とまでは言えません。大型交通事故・列車事故・航空機事故のように、その被害が甚大なものになったときに災害として認知され、多くの命を助けるための迅速な処置が必要となってきます。

交通事故

特に高速道路での事故は加速されているために重症例が多くなります。

わが国の道路は比較的狭く、交通事故が発生したときに道路を横断的に塞ぐことで起こる玉突き衝突、多重衝突事故が発生します。またガソリンに引火する炎上事故では重症熱傷、多発外傷、一酸化炭素中毒などにより更に死者が多くなります。

列車事故

日本は世界の中でも交通網が発達した国です。多量同時高速輸送の現代においては、列車事故災害は甚大な被害をもたらします。例えば新幹線の乗車率100%の時は約1600人が乗車しています。200kmのスピードで走るとすると、1600人が同時に200kmのスピードで移動している事になります。脱線、転覆したらと考えるとその負傷者数は想像を絶します。この場合の被害は、列車の速度、転覆した地域・地表状態、衝突したものやガラスの割れ方、混雑の程度によって変化します。

航空機事故

航空機の発達により世界はより近くなりました。しかし、航空機は大型化されたことで事故が発生すると一度に多くの犠牲者が発生します。航空機事故の場合犠牲者は重症及び死亡者が多くなります。離発着時にトラブルが発生した場合には生存者の望みはありますが、高空飛行中にトラブルが発生し墜落した場合にはほとんど生存者は望めません。どの状況で事故が発生したのか、事故の発生形態は大きく異なるため、その状況を見極め、災害の種類や大きさにしたがって、被害を予想し対応をしていかなければなりません。

戦争・テロ

災害の占める割合における自然災害は全体の30%であり、残りの70%はテロや紛争・戦争によるものです。特にテロ災害は手段・規模ともに大きくなり、犠牲者も急増しています。戦争と違い、いつ、どこで、なにによって起こるかが予測できないのがテロです。平和な暮らしをおびやかす、このテロという災害を直視し、対応策を講じていかなければなりません。

テロの特徴

  1. 非合法
  2. 恐怖をもたらす暴力・武力
  3. 住民の不安を介して政府当局を威圧
  4. 犠牲者は誰でも良く無差別である
  5. マスコミを通し視聴者に訴える(現場の舞台化)
  6. 最終目的は政治的・社会的変革

テロの手段

爆弾・火炎瓶・発火弾・銃撃・放火

NBC災害

特にテロをはじめとして化学兵器を使った災害を、核(放射能)Nuclear・生物Biological・化学Chemicalの総称でNBC災害といいます。

核・放射線災害 N:Nuclear

核燃料などの放射線物質が飛散・拡散し人・物の体内に付着、または体内に入るが無味無臭のため気づかれずに放置されてしまう危険性があります。

症状:直接被爆は重度熱傷を及ぼし、放射能汚染は胎児まで影響を与えます。主な症例は白血病・甲状腺腫瘍です。また治療側も汚染される可能性が高く、早く除染することが重要です。原子力発電所や核燃料施設での事故により多くの被災者が発生しています。

生物災害 B:Biological

米国多発テロ後の2001年10月3日以降にB型災害炭素菌芽胞「白い粉」が郵送され、白い粉の恐怖が問題になりました。11人が炭素菌を吸いそのうち5名の方が死亡しています。

●化学災害 C:Chemical

松本サリン事件から地下鉄サリン事件は世界を震撼させ、被災者数6185名のうち死者12名、入院714名に及ぶ大災害となりました。

松本サリン事件・東京地下鉄サリン事件後、テロは「if」から「when」の問題になったと言われるようになりました。わが国はサリンの当事国ですが医療機関や消防機関においても化学兵器を使ったNBC災害への取り組みはまだ十分になされていません。

「もし起きれば」ではなく「いつ起きるか」の危機管理が重要です。

台風・水害

世界の地震の10%強は日本で発生すると言われていますが、それ以上にわが国で多いのが水に関係する災害です。地震がない年があっても水害のない年はないといわれています。 水害による被害は、台風や集中豪雨によって引き起こされた河川の氾濫による負傷や、土石流により家屋が倒壊したことで受ける外傷が多くなります。2004年の異常気象により台風の発生は増加しており、2004年の新潟・福井での集中豪雨被害は記憶に新しいところです。

災害の特徴

予想が可能な災害といえます。集中豪雨・台風は短時間で水害になりやすいため、事前に備え、注意することが必要です。

水害による負傷者の損傷部位は汚染されやすいため、早急な衛生・消毒処置が必要です。また、安全な飲料水を確保するなど、水害後の伝染病の予防が最も重要になります。

火山噴火

日本は火山列島でもあり、北から南まで大小さまざまな火山があります。浅間山のように長年の眠りから覚め、活動を再開した火山は長期にわたって近隣住民に不安を与えます。しかし、火山噴火は地震等の災害に比べ、予想が可能な災害と言え、適切な対応・処置をすることによって被害を事前に防ぐことができます。

火山噴火による人的被害の特徴

噴火時の降灰や熱による熱傷被害。泥流、噴煙・噴石による負傷。主な疾患は火山性ガス吸入による気道熱傷、降灰吸入による呼吸器疾患。 特に、火山性ガス吸入による硫化水素中毒は死亡率が高く注意が必要です。

1991年6月の九州雲仙普賢岳噴火では溶岩の流れが強く、高温の熱風が山肌を流れたため被災者の多くは重度の熱傷被害を受けました。その中でも特に火山性ガス吸入による気道熱傷被害が最も多く、43名が死亡しました。

2000年3月北海道で発生した有珠山噴火では事前に噴火を予知したことによって早めに住民を避難させた事から犠牲者の発生を防ぐことができました。

しかし、地域住民は長い避難所生活を余儀なくされ、狭い避難所でのプライバシーが確保されていない生活や、いつ帰宅許可が出るのかわからないこと、先が見えない不安による心の傷という新たな問題が発生しました。

同年9月の三宅島噴火により島民の3874名が避難勧告を受け、やはり同様の問題が起こりました。避難勧告が解除された今でも、いつまた火山活動が再開するかわからないと危惧することによるストレスは大きく、政府・自治体はもちろん、援助者による十分なケアが必要となります。

Copyright© Tatsue YAMAZAKI