学術集会に参加
2014年2月25日(火)・26日(水)東京国際フォーラムにて、東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 救急災害医学分野 大友康裕教授のもと、第19回日本集団災害医学会が開催され、私も参加しました。
会場となった東京国際フォーラムはとても広く、さらにA・B・C・D棟と分かれています。そのせいか、この学会に多くの方が参加されていると思われるものの、実際に会える人は限られており少々寂しく感じられます。
私の発表は、まず初日の日本DMORT研究会のセッションで、伊豆大島に派遣された時の報告を15分ほどで行いました。
次に一般演題として、「2011年 東日本大震災被災看護職の精神的健康 ー福島県における6病院を対象としてー」を発表しました(資料後述)。
また、私の企画した特別講演 特別セッション12「惨事ストレスが支援者・被災労働者のこころに及ぼす影響」にて、防衛医科大学校 精神科学講座 重村淳先生とともに座長を務め、あわせて発表もさせていただきました。
元々この学会は救急関係の医療者の参加が多く、発表もそれに準じた救命・救急の内容が多く占めています。
最近こそストレスに関する演題も徐々に聞かれるようになってきたものの、それでも参加者の皆さんの関心は救急分野ではないかと思われます。
私はこのセッションの持ち時間を90分~120分として大友会長に希望しましたが、盛り沢山の特別セッション、しかも学会は2日間の開催と時間が限られていたこともあり、短縮され70分となりました。この間に4名の演者の発表なので一人約15分。
このような中での発表ではあったものの、演者の諸先生方のこれまでの経験、知識やデータの裏付けから、会場の皆様には伝えたいことがしっかり伝わったと思います。
またこの特別セッションは日本医師会認定産業医研修に指定され、参加された方には産業医研修の単位が付与されることになり、20名の方が単位を取得されたようです。
この産業医研修として指定されたセッションは私たちのセッションのみとのこと、少しでもお役に立てて良かったです。
会場には200名位の方が来られていたと思います。他の多くの会場で講演や口演・ポスター発表されているのに、私たちのセッションに来場してくださいました皆様には、心から感謝いたします。
嬉しい悲鳴
会場には2つの書店が出店されていました。2日目には会場の様子にも慣れてきたこともあって余裕もでき、何気なくその内の1店を覗いてみました。そして感動しました、あらあらです。
私が関係している書籍が2冊、上位にランクインしていました。嬉しいですね。
1冊は「災害時のヘルスプロモーション2」です。なんと2位です(昨年は確か1位でした…)。
多数の傷病者発生時に医療施設としての受け入れについて、普段からの訓練の重要性や、私が臨床で行ってきた教育訓練等を執筆したものです。多くの先生に執筆の協力を頂きました力作です。
もう1冊は、石川県看護協会災害対策委員の皆様と協同で作成しました「被災地で活動するナースのための災害派遣シミュレーションQ&A」です。災害発生後に被災地に派遣され活動した看護師の皆さんが、疑問に思ったことなどをQ&Aとしてまとめたものです。
この書籍は看護師、しかも災害支援ナースに特化した内容なだけに読み手の方もかなり絞られるため、どこまで販売できるのだろうと心配していたものです。沢山ある災害関係の書籍の中でなんと4位ですよ! 2位と4位、これは喜び嬉しい悲鳴でした。
資料
一般演題
2011年東日本大震災 被災看護職の精神的健康 ー福島県における6病院を対象としてー
The mental health of nurses suffered from the Great East-Japan Earthquake in 2011 by investigating six hospital in Fukushima Pref
目的
災害による看護職の外傷後ストレス障害の有無や強弱に影響を及ぼす要因を検討する。
調査対象と内容
福島の6つの病院の看護職を対象に625票を配布し401票を回収した。
地震発生から約1年半までの期間に起きた出来事について、患者ケアに関して苦労したこと(8項目)や勤務に関して苦労したこと(20項目)について尋ねた。
これらの設問は、いずれも多重回答形式で、また、地震発生からの約1年半後の精神的健康について「改訂出来事インパクト尺度(IES-R)(飛鳥井, 1999)」に回答を求めた。
結果および考察
外傷後ストレス障害のリスク率、IES-Rの22項目を単純加算しIES-R得点とした。IES-R得点のハイリスク群は38.4%であった。震災から1年半が経過した時点においても高い割合で外傷後ストレス障害のハイリスク群が存在した。
患者ケアで苦労したことは、「放射線の影響を懸念する患者がいた(57.4%)」がもっとも多く、9割以上が患者ケアに関して何らかの苦労をしていた。
勤務に関して苦労したことは、「人手不足による苦労が増えた(60.8%)」がもっとも多く見られた。
このように震災の混乱から多忙な状況が続き、体力的な苦労をすることが、勤務に関する主な苦労であった。
シンポジウム「災害と精神医療」
企画名
惨事ストレスが支援者のこころに及ぼす影響
Mental health consequences of disaster workers following disaster exposure
座長
山﨑達枝(評議員:岐阜医療科学大学)
Tatsue Yamazaki (Gifu University of Medical Science)
重村淳(評議員:防衛医科大学校 精神科学講座)
Jun Shigemura (Department of Psychiatry, National Defense Medical College)
演者
重村淳(評議員:防衛医科大学校 精神科学講座)
福島第一・第二原発職員のメンタルヘルス
山﨑達枝(評議員:岐阜医療科学大学 保健科学部)
看護師の受ける惨事ストレス
松岡豊(国立精神・神経医療研究センター)
東日本大震災に従事したDMAT要員のストレス調査
染田英利(防衛医科大学校 防衛医学講座)
歯型身元確認作業による惨事ストレスの影響
全体抄録
災害時、救援・支援業務従事者(以下、支援者)の業務は猛烈な苦悩を生じさせる。傷病者・遺体・遺族との関わりによって甚大なストレス(惨事ストレス)を受け、情報が不足したり錯綜したりするなか決断を求められ、途轍もない過重労働にさらされる。支援者自身が被災している場合、自分自身や家族の安全が十分に確保できないなか、不眠不休で働くことは、後々に深い自責感・不全感を残すこととなる。
支援者が惨事ストレスへの知識・資料・心構えを事前に持っていれば、その負担は多少なりとも和らげることができる。しかし、その対策が不十分なまま災害現場に関わると、惨事ストレスは支援者のメンタルヘルス、そして職業人生に大きな影響を及ぼしうる。実際、多くの研究は、災害時メンタルヘルスの高リスク者として支援者を挙げている。
このシンポジウムでは、東日本大震災後の支援者のメンタルヘルス研究(Shigemura J et al, JAMA 2012など)、そして何より、支援者の「語り」を通して、災害前・中・後における惨事ストレス対策上の課題を考えていきたい。
- 中日新聞掲載記事(2014.03.04)(PDF)