山﨑達枝 災害看護と私 Disaster Nursing

第18回世界災害救急医学会に参加
18th World Congress on Disaster and Emergency Medicine

2013年5月28日~31日、イギリス・マンチェスターで第18回世界災害救急医学会が開催された。

学会誌プログラム集から紹介されている参加(発表者)数は297名、演題数は414演題、そのうち日本人の発表は42演題であった。学会のみ参加者を含めると日本人の学会参加者は60名位いたのではないかと思える。

前述からわかるように、日本人の参加者や演題数が多く、セッションによっては日本人による座長と日本人による発表者で「日本集団災害医学会がマンチェスターで英語によって発表しているようだ」と話題になったほどであった。

私は、昨年東日本大震災被災地福島県内の被災看護職を対象にストレスに関するアンケート調査を行い、その調査結果をポスターにて発表した。

事前に送られて来た学会誌から私の発表は5月29日午前10:15~10:40と理解できたが、どのような流れになるのか全く分からず。

昨年行われた世界災害看護学会のように、決められた時間にそのポスターの前に立ち、参加者に質問されたら答えるという流れなのか? いやいや学会誌には座長の名前も記載されている、これはきっと発表があるのだろうと思い始めた。

何と私は怠慢なのだろうと思いながら、英語の不得意な私は誰かに応援をお願いしなければと思い英語の堪能な友人に傍にいてほしいと依頼した。(自慢できることではないが)

現地に着いてから何度か発表原稿を読み練習を行うと、私は何を言いたいのか明確にされてないと気がつき、何と愚かなんだと反省しながら「まぁ何とかなるだろう」といつものような諦めが先になり発表の日を迎えることになった。

当日、座長は中国の女性、発表が終わると、つかさず座長から「ところで貴方は何が言いたいのですか」『やっぱりきましたかぁーその質問がーー』と思い、なんとかたどたどしい日本語英語で応えその場をしのいだ。

その後、参加者の皆さんからの次々の質問で英語に追いついていけない……前述したように日本人の参加者が多いことで、質問内容を日本語で伝えて頂き私が日本語で答え英語に訳して頂く……さらに事前にお願いしていた友人に助けて頂き何とか私の持ち時間が終わった。

その瞬間は「ホットした」が正直な気持ち、しかし、その後は何時ものように落ち込んだ。私は何時もどの学会でも終わると暫くの間落ち込む。

このような発表内容ではまだまだ駄目、この部分をもう少し加えたら良かったとか等々、後悔が多く軽い燃え尽き症候群のようになる。だが、終わった瞬間の解放感が忘れられずに、懲りずに次回をめざす。

会場からの質問の内容は、①若い人と比較し、年齢の高い看護経験の長い人程ストレス度が高いのはなぜか、そして②今後どのような対策フォローしていくのが良いのか、その予定はあるのか、であった。

回答として、①については、社会的立場、母・妻であり義理の父や母の世話と共に職場では重要な役割を持つ年令である。経済的にも重要で、子どもの教育費などを考えると簡単に退職することはできない。重要な管理的立場の人は、災害発生後瞬時に重要な判断が求められる。また、立場を変わってくれる人がいない等々。

②については、アンケート協力をいただいた看護協会には、支援者へのこころのケア支援として出張セミナーを開催している。病院施設にはアンケート結果を報告し、組織としての対応やケアの留意点などを伝えたりしている。

日本は歴史的に多くの災害を経験してきた。災害多発国日本は阪神・淡路大震災から、多くの地震・台風・竜巻・気象災害そして事故など体験している。災害は多様化・複雑化してきている。

災害発生度にその災害を専門家により記録し、被害を少なくする研究がされ、知識・技術を蓄積し、減災に向けて防災・減災の文化を育んできた経緯がある。その結果、東日本大震災では地震による建物の破壊はほとんど無かったと言われている。

しかし、2011年3月11日に発災した東日本大震災から3年目の今、徐々に風化してきているのでは? と危機を感じているのは私だけだろうか。

災害医療に取り組む者として、これまで学んだことを我々から学会などを通して発信していくべきと改めて痛感した。

photo 発表時の様子
photo 発表内容と筆者

私のポスター発表会場に参加された方から、帰国後受信メールを紹介します。

  • おはようございます。マンチェスターのWADEM学会で、山崎先生にバッタリお会いしました。
  • 英語は問題なしでした。とにかく、災害看護に関して日本からの発信が必要なので、山崎先生のような頑張りが必要です。

暖かく嬉しいメールを拝受しました、有り難うございました。嬉しくなりましたが、このままの英語では全く駄目、本格的英語の勉強をしなければとまた新たな課題が与えられたようです。

第19回世界災害救急医学会は南アフリカで開催されるそうです。

(2013年8月掲載)
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